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カスタマーレビュー
おすすめ度:
溢れる知識とシダへの愛
(2008-07-16)
以前読んだダロルド・A・トレッファート「なぜかれらは天才的能力を示すのか」というサヴァン症候群に関する集大成的な本の中で、趣旨上、多くの神経科医の所見や著書からの引用が紹介されていたのだけど、中でもオリヴァー・サックス氏の言葉は人間味と慧眼を持ち合わせていて、抜きん出て印象深かった。検索すれば邦訳された著書も多い。片っ端から読んでみようと思った、本書がその1冊目。本職の傍ら、シダ類をこよなく愛好するサックス氏。シダの楽園であるメキシコ・オアハカ州への一週間の観察ツアーに参加して、動植物のエキスパートである同好の士達と旅を共にする。
サックス氏はシダ愛好者ではあるけれど、ある程度の学名と種類を弁えたらあとはただその姿を愛でる程度で満足であったようだ。ところが、これはどんな同好サークルでもそうだろうけれど、「好き」のランクにも上には上がいるもので、参加者はプロ・アマチュアを問わず氏の情熱を遙かに上回るテンションで訪れる先々で繁茂するシダに食らい付く。その微妙な温度差が、卓抜した人間観察の眼を持つ著者によってユーモアたっぷりに記される。氏が彼らと同じテンションを持っていたらきっと本書の滋味は半減しただろう。交わされる会話の内容は自然科学の広範な領域にまたがり、著者をはじめ参加者達の並はずれた知識量には舌を巻かされる。そらで飛び交う学名の羅列はまるでハリー・ポッターの呪文のようで、特にその密度の高いページを読んでいると次第にクラクラしてくるが、参加者が心底楽しんでいる様子が、それを見てうきうきしている著者の文章によって読み手に伝わってくる。良い旅行記の例に漏れず、読後は一緒にひんやりとした草の香を嗅いで回ったような錯覚を覚える良書だ。
シダって奥が深いんだ
(2005-08-17)
私はラテンアメリカが好きで、ナショナル ジオグラフィッ・ディレクションズの本なので面白い旅行記なんだろうなあと思って読んでみました。まずオアハカは乾燥した場所だと思っていたので、そこにシダの楽園があるということに驚きました。作者は本職が脳神経科の医師で本も書いている人らしいのですが、文章が日記なのにいや日記だからか、理数系の人の文章でとても読みやすかったです。私も植物が好きなのですが、今まではシダにはあまり興味がありませんでした。でもシダ類からすべての他の植物が進化したという記述を読んで(そういえば理科で習ったような)改めようと思いました。
欲を言えば、シダ観察ツアーの日誌なので仕方ないのですが、オアハカの町や人についての記述がもっとあるとよかったです。
羨ましい旅
(2004-06-20)
優れた医学エッセイを数多く出版している脳神経外科医、というのが本業のオリヴァー・サックスだが、実はシダ植物をこよなく愛しており、メキシコまで観察ツアーに出かけるというほどの凝りようなのである(というより、他の植物も好きらしく、ソテツのことは別の本に書いてもいた)。さらには、同行するアメリカシダ協会の人々の、シダに関する知識は当然のことながら、シダとは全く関係ない蘊蓄に溢れた会話の含トリビア度も、ものすごいことになっており、アマチュアの底力(たとえば、天文学や植物学などの分野では素人の発見は侮れないものになっているらしい)を見せつけられもする。トリビアとは、テレビ番組でまとめて紹介されるものではなく、自分でひとつひとつ本の中などから掘り起こすものなのだと改めて実感する。たとえば、「地球上の動物の4分の1は蟻である」ことまでは知っていても、「蟻は大量のメタンを作り出し、オゾンホールを大きくするので、(人類にとって?)脅威である」ということまでは知らないかもしれない(実はこの本に溢れているトリビアはものすごい数なので、全然「ひとつひとつ」ではない矛盾があるのだが)。
おすすめ度:
溢れる知識とシダへの愛
以前読んだダロルド・A・トレッファート「なぜかれらは天才的能力を示すのか」というサヴァン症候群に関する集大成的な本の中で、趣旨上、多くの神経科医の所見や著書からの引用が紹介されていたのだけど、中でもオリヴァー・サックス氏の言葉は人間味と慧眼を持ち合わせていて、抜きん出て印象深かった。検索すれば邦訳された著書も多い。片っ端から読んでみようと思った、本書がその1冊目。本職の傍ら、シダ類をこよなく愛好するサックス氏。シダの楽園であるメキシコ・オアハカ州への一週間の観察ツアーに参加して、動植物のエキスパートである同好の士達と旅を共にする。
サックス氏はシダ愛好者ではあるけれど、ある程度の学名と種類を弁えたらあとはただその姿を愛でる程度で満足であったようだ。ところが、これはどんな同好サークルでもそうだろうけれど、「好き」のランクにも上には上がいるもので、参加者はプロ・アマチュアを問わず氏の情熱を遙かに上回るテンションで訪れる先々で繁茂するシダに食らい付く。その微妙な温度差が、卓抜した人間観察の眼を持つ著者によってユーモアたっぷりに記される。氏が彼らと同じテンションを持っていたらきっと本書の滋味は半減しただろう。交わされる会話の内容は自然科学の広範な領域にまたがり、著者をはじめ参加者達の並はずれた知識量には舌を巻かされる。そらで飛び交う学名の羅列はまるでハリー・ポッターの呪文のようで、特にその密度の高いページを読んでいると次第にクラクラしてくるが、参加者が心底楽しんでいる様子が、それを見てうきうきしている著者の文章によって読み手に伝わってくる。良い旅行記の例に漏れず、読後は一緒にひんやりとした草の香を嗅いで回ったような錯覚を覚える良書だ。
シダって奥が深いんだ
私はラテンアメリカが好きで、ナショナル ジオグラフィッ・ディレクションズの本なので面白い旅行記なんだろうなあと思って読んでみました。まずオアハカは乾燥した場所だと思っていたので、そこにシダの楽園があるということに驚きました。作者は本職が脳神経科の医師で本も書いている人らしいのですが、文章が日記なのにいや日記だからか、理数系の人の文章でとても読みやすかったです。私も植物が好きなのですが、今まではシダにはあまり興味がありませんでした。でもシダ類からすべての他の植物が進化したという記述を読んで(そういえば理科で習ったような)改めようと思いました。
欲を言えば、シダ観察ツアーの日誌なので仕方ないのですが、オアハカの町や人についての記述がもっとあるとよかったです。
羨ましい旅
優れた医学エッセイを数多く出版している脳神経外科医、というのが本業のオリヴァー・サックスだが、実はシダ植物をこよなく愛しており、メキシコまで観察ツアーに出かけるというほどの凝りようなのである(というより、他の植物も好きらしく、ソテツのことは別の本に書いてもいた)。さらには、同行するアメリカシダ協会の人々の、シダに関する知識は当然のことながら、シダとは全く関係ない蘊蓄に溢れた会話の含トリビア度も、ものすごいことになっており、アマチュアの底力(たとえば、天文学や植物学などの分野では素人の発見は侮れないものになっているらしい)を見せつけられもする。トリビアとは、テレビ番組でまとめて紹介されるものではなく、自分でひとつひとつ本の中などから掘り起こすものなのだと改めて実感する。たとえば、「地球上の動物の4分の1は蟻である」ことまでは知っていても、「蟻は大量のメタンを作り出し、オゾンホールを大きくするので、(人類にとって?)脅威である」ということまでは知らないかもしれない(実はこの本に溢れているトリビアはものすごい数なので、全然「ひとつひとつ」ではない矛盾があるのだが)。
何よりも、本当に好きなものを見てワクワクしている人々の幸福感に溢れており、羨ましい気持ちでいっぱいになる本である。

